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作品のご紹介

ギリシア地図

地図シリーズ


ギリシア地図

Angel

制作開始から完成まで


2022年6月26日
制作開始
今年の夏は、ギリシア旅行をしよう。
(バーチャルだけど) と思い立った。
明日、8号スクエアのキャンバスを買いに行こう。。。
と決めてから、少しづつ制作を始めた。
 
2022年6月30日
バーチャルギリシア旅行を始めるにあたって、さまざまな資料を卓上に積み上げて読みはじめた。
まず知ったことは、ギリシア世界は多島海が織りなす交易と交戦と防御の世界だということだ。
紺碧の海と白い建物のイメージは、古代ではなかった風景であることも。
古代のギリシアの表現では、海はワイン色と言われていたらしい。さて、最初の問題に行き当たった。
海の色はどんな風につければ良いだろう。
おおよその地図を描き、下地を作り。フレスコ画の少し醒めた色を連想させるペパーミント色を塗ってからギリシア世界の始まりの扉のある、クレタ島を描きはじめた。
去年のスペイン地図のように、この旅は、猛暑の中、まだまだ続くだろう。
ギリシアあれこれ。
古代と現代とを除いて、ギリシア人というものは、存在しないらしい。
ローマ帝国に吸収された後ギリシア人は、ギリシア人でいるよりもローマ人でいる方がメリットが大きかったので、どうやらローマ人化してしまったようだ。
ギリシアは、西洋文化の揺籠といわれながら実に謎が多い。アルゴリウス洞窟時代から、キクラデス文化時代、クレタ島の宮殿文化、ミケーネ文化などの超古代の文明が民族移動?
はたまた謎のカタストロフで灯火が消えたあと、都市国家時代を構築するまで、ヨーロッパ中世に近い暗黒時代があったという。
その間に訪れた謎の海の民族。鉄器をもたらしたという荒々しい人々。
ちっぽけなエーゲ海を舞台に、作物も豊富に取れない、ワインとオリーブだけが実る多島海を舞台に
、謎の線文字AやらBやら、その後定着したアルファベットの成立を持って、現代まで続く、哲学や数学、美しい詩や、戯曲などを生み出した文明の産地の奇跡に驚くばかりだ。

ギリシア地図制作過程
ギリシア地図制作過程

2022年7月7日
まだまだ遠い道のりだけど、エーゲ海に点在する島々を探索しながら、情報を集め、名前は聞いていても場所まで知らなかったあれこれを知って、結構面白いバーチャル旅行を楽しんでいる。
一夜で海の底に沈んだと言われる、かつてプラトンがアトランティスについて書いた、後世この島ではないかといわれた、サントリーニ島は、大陸の残骸と言われるにはあまりにも小さくて、むしろエーゲ海の南一帯がクレタ島も含めて繋がった大きな島で、それが散り散りに地殻変動で沈んでしまったのだろうかと思ったりする。
そのサントリーニ島の近くでもう少し大きなイオス島は、ギリシア世界の叙事詩を語った、ホメロスのお墓があるという。
そして少し東に進むと、聖書の中でも難解と言われる、ヨハネ黙示録をその島の洞穴で、聖ヨハネが書いたという言い伝えのある、パトモス島がある。
その横に、医学の父と言われるヒポクラテスがかつて弟子たちを導いた、アスクレピオス神殿でも有名なコス島があり、南におりると、騎士団で有名なロードス島は、ポセイドン神の生まれ故郷とも言われているらしい。
全能の神、ゼウスの生まれ故郷は、クレタ島で、その配偶者のヘラは、北に登った、サモス島の柳の木の下が生誕地だそう。
島々は沢山あり、なかなか本土まで行き着けない。(涙)
今夜はどうしても新鮮な魚介で、天ぷらが作りたくて、しばし筆を置いて買い出しに。(笑)
ギリシアを描いていると海産物が食べたくなる。
 
2022年7月10日
一夜にして海に沈み込んだ、サントリーニ島の人々は、なんらかの予兆を感じ取っていたのか、紀元前1500年前、持てる家財を持って、島を後にしたらしく、発掘された遺跡には、生々しい生活感や痕跡は残っていなかったという。
反対に、噴火のその瞬間まで、火山灰の下、時が止まったかのように、ポンペイの遺跡には、寸前まで生きていた人々の生活がその当時のまま残されている。
どちらも歴史の中に埋もれていってしまった、はるか昔の都市の物語だ。
今この国は、一夜にして沈む島ではないけれど、緩やかに沈む船であることはたしかだ。
外部の侵略から滅びる国々も歴史上多いが、内部の腐敗から自滅して消えゆく国も同じくらい多い事を、知ることは大切だと思う。

ギリシア地図制作過程
ギリシア地図制作過程

2022年7月16日
遅々として進まない、ギリシア世界の旅。
今日は三百人でペルシア兵と戦った、スパルタのレオニダス一世の逸話を読んで、少し目頭が熱くなった。今まで、レオニダスというと、チョコレートの事だと思っていた自分が恥ずかしい。。。
アテネは大きな犠牲を払ったスパルタに対して、もっと感謝しなければならなかったのに、図に乗って、威張ったのが、後にペロポネソス戦争に負ける原因になったのだろうかと思う。
ディロス島はめちゃめちゃ小さいのだけど、ギリシア史においては、とても大切な所で、同盟の本拠地になった所だけど、そこで、太陽と月の神が生まれたという伝説は面白い。
つまりギリシア世界のヘソに当たる所なのだと思った。
エピダウロス、デルフィ、アルカディア、まだまだ描かなければならない場所は沢山ある。
 
2022年7月31日
ようやく古代ギリシア地図の旅が終わった。
地図上にはただ神話の神や英雄などを描き入れるだけの作業だったが、若い頃の歴史の先生のおはなしや、そういえば美大に行かなかったら、史学部で考古学を学びたいと思っていた事を思い出したりした。
地図を描くという事は、現代の状態ではなく、過去に遡ることも出来、その土地を俯瞰的に見る事ができる、時間を重ね合わせる、レイヤー的な作業なのだと気がついた。
痩せた土地の多島海の世界から奇跡のように発達した、医学、哲学、政治形態は、恵まれた大きな平野に住んでいて到達し得ない、気付きがもたらされる場所だったのだろうと思う。
いつか、この疫病騒動が落ち着き、再び自由に世界を行き来できる時が来たら、エーゲ海を見にいきたいと思った。

ギリシア地図制作過程
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