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伊勢物語鶯

和風シリーズ


伊勢物語鶯

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伊勢物語鶯の解説


伊勢物語も終盤に近い第121段に、鶯の歌が出て来る。
この歌を知る人は、かなりマニアックな人だと思う。
筒井筒のように、古典の教科書に載るような有名な箇所ではないからだ。
でも、高校時代学習参考書の伊勢物語の本の後ろの方に載っているこの歌を見つけて以来、ずっとこの歌の持つ王朝美学と雅な男女のやりとりにあこがれの気持ちを持ち続けている。

どのような歌かというと、

昔、男、梅壺より雨に濡れて、人のまかり出づるを見て、
うぐひすの 花を縫ふてふ 笠もがな 濡るめる人に 着せて帰さむ

現代語訳としては、昔、ある男が宮中の梅壺から女官が雨に濡れて退出してくるのを見て鶯が、青柳を糸として梅の花びらを縫い合わせて作るという、梅の花笠でもあれば良いのに。そうすれば雨に濡れているあなたにその笠をかぶせてお帰りいただくのに。
という歌で、この歌には女官から男に対しての返歌があり、

うぐひすの 花を縫ふてふ 笠はいな おもひをつけよ ほして返さむ


意味は、鶯が梅の花びらを縫って造るという花笠は、いりません。
あなたの胸の「思ひ」に火をつけてください。その火で濡れた着物を乾かして、その「思ひ」をまたあなたにお返ししましょうからというなんとも雅で粋な相聞歌になっている段なのだ。
もとは催馬楽の中にある青柳に、鶯が柳の糸で梅の花笠を縫うという言葉が出て来るので、その歌を下地にした和歌だそうだ。

高校時代、風通しの良い図書室で一人平安時代に、頭だけ飛んでいた私は、このように優雅な時代が日本に実在した事、そして日本の男性がこれほど優雅なラブアフェアをする能力があった事が奇跡だということに、ちっとも気がつかず、いずれそんな恋をいつか出来るようになるだろうか、なんて、うっとり考えていた。
現実は鶯の歌どころか、まわりくどい告白もなく、胸が高まる素敵なシュチエーションもなく、気がつくと、齢50を超して今に至ってしまった。

なぜこんな事を書いているかと言えば、いつかこの段を、絵にしてみたいと、ずっと思い続けていて、ようやく最近エスキースが決まり、作品として作る事が出来そうになって来たからだ。
リストの巡礼の年の絵も、構想から仕上がりまで数年の年月がかかったが、この121段は、16の頃から頭の中に妄想が膨らんでいたのだから、50年近い年月を経て、ようやく形が見えてきた、私の人生の一種のライフワークとも言えなくもない。
これほどまで、この歌が好きなのは、前前前世でもしかしたら、こんな粋な人に出会い、このような歌を送り合って、珠玉の恋をしたからなのかも知れない。

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